我が家は4人家族なので、気が付けばすぐに、ごみ箱は満杯になる。
ごみがどんな風に処理されて、どんな風にリサイクルされているのか?
今まで知る機会があったはずなのに、あまり積極的に「ごみ」についての情報を集めようとしてこなかった。
ごみを集めてビニール袋に入れて、ごみ収集所に出す。
その先にある施設や働いている人達は、どんな思いでごみ処理を行っているのか?いつからか知ってみたいと思うようになっていた。
今回は、東埼玉資源環境組合 計画課の職員から、第一工場ごみ処理施設を見学させていただきながらお話を伺ってきました。
365日年中無休でごみは処理され続けている。
こちらの第一工場ごみ処理施設は、平成7年に建設されたのだそう。
自分で調べるまで、私はこちらの美しい建物がごみ処理施設だということがわからなかった。それくらい、こちらの施設から煙はほとんど出ず燃やす匂いも一切しない。「小さな博物館かな?」と、ときどき通りすぎるときに思っていたくらいだ。
見学ルートを歩きながら施設の紹介をしていただくが、広い廊下はまだピカピカと光って新しい施設のように見える。
まずは、施設を管理するための中央操作室。中央操作室にはいくつものモニターがずらりと並び、ごみピットや焼却炉内部などをすべて見られるようになっている。
ーーたくさんのモニターが並んでいるんですね。
こちらは、中央操作室です。施設内はとても大きな工場ですので、沢山の監視カメラを使用しています。いろいろなセンサーがありますので、モニターで監視しています。
ーー操作室の人数は思っていたよりも少ないんですね(このときで2~3名)。
当工場はごみを24時間365日ずっと燃やしていますので、必ず何人かが監視できるようチームを組んでおります。
ーー今はお盆期間中で、ご対応していただいて大丈夫だっただろうか?と心配していたんですが……。
当工場は年中無休ですので、大丈夫です。
焼却炉が全部で4つありまして、今ちょうどモニターで見えているのが、3号炉と4号炉が燃えているところです。毎年必ず定期補修を行っておりまして、1号炉と2号炉は休止中でメンテナンスをしています。焼却炉はずっと燃やし続けていますので、必ず年に1回は火を落として整備・補修を行う必要があります。
ーー1日で、大体どれくらいのごみが搬入されるんでしょうか?
収集車にすると、1日で大体260台くらいやってきます。1台の収集車で大体2~3tのごみを積んできますので、1日にすると大体500tくらいですね。
ーーええ!?そんなに大量のごみが1日で運ばれてくるんですね。
ーーこちらのタービン発電機室とは?
こちらは、ごみを燃やしたときの熱を使って蒸気を作り、その蒸気で「発電」を行っています。タービンのなかには羽根があり、蒸気を羽根に当てて回すことによって発電機を動かしています。
ーー越谷市内の電気もこちらから供給しているのでしょうか?
作った電気の3分の1くらいは、この工場の中で機械を動かすのに使っていまして、残り3分の2くらいは電力会社に売電をしています。発電機は2台あり、今は1台の発電機がメンテナンス中です。
ーーごみ処理施設は煙がもっとモクモクと出るのかなと思っていたんですが、こちらの施設は全く煙も匂いもしないので、とても不思議に感じていました。
当工場は、燃やしたあとの排ガスをきちんと処理しています。冬に「煙突から白い煙が出ている」と周辺の方からお声をいただくんですが、実は煙じゃなくて水蒸気なんです。冬に息を吐くと白い息が出るように、水蒸気が白く見えているんです。
ーー周辺住民の方々に害が及ばないように、努力されているんですね。
国で定められた基準値を守るのはもちろんのことですが、地元の方々と結んだ協定があります。国よりもさらに厳しい基準値で、それを守るようにしています。
ーー私が本当に近隣に住んでいて「ごみ処理場ができる」と聞いたら、少し抵抗があるかもしれません。周辺の住民の方達と話し合いを重ねて、ここが作られたんですね。
そうなんです。地元の方と「協議会」を設けておりまして、運転状況などをご報告するようにしています。
次に焼却炉ですが、燃えているところをお見せするのは難しいので、ここでは焼却炉の外側の部分がご覧になれます。収集車が持ってきたごみは「ごみピット」というところに集められて、「ごみピット」のクレーンで焼却炉の入り口の「ホッパー」に運び、焼却炉で燃やします。燃やしたごみは灰になり、灰は「灰ピット」に入ります。
ーーちなみに、ごみの量に対して燃やすのは毎日間に合っているのだろうか?と気になっていました。
当工場の焼却炉は4炉ありまして、1炉あたり1日200t燃やすことができます。ですから、最大で1日800t燃やせます。1日で500t前後のごみが搬入されますから、十分に燃やせます。
ーー1日でそんなに大量のごみが燃やせるんですね!「灰ピット」に入った灰はどこへ行くのでしょうか?
最終処分場で埋め立てたり、リサイクル工場でリサイクルしたりしています。
ーー燃えるごみには、プラスチックを入れても問題ないのでしょうか?
焼却炉は800℃以上で燃やすことが義務付けられており、当工場の焼却炉は、850~1,000度と高温で焼却しています。
低い温度で燃やすと、不完全燃焼で有害なものも出やすくなります。高い温度で燃やすことで、有害物質を出すことなく完全に燃やせます。「濾過式集塵機」というバグフィルターで有害なものを取り除いて、基準を守った排ガスを煙突から出しています。
ーー焼却炉を初めて見ましたが、上から下までかなり大きなものなんですね。
かなり大きいですね。焼却炉は4階建ての建物くらいの高さはあるかと思います。中が階段状になっておりまして、ごみが徐々に落ちる仕組みになっています。
ーー中で働いている人達の健康や怪我も心配な部分かと思いますが、どのような取り組みが行われているのでしょうか?
場所に応じた服装や装備を、必ず行うようになっています。
粉塵が多いエリアでは防塵マスクをつけますし、頭部を守るヘルメットや目を守るゴーグルなど、手袋・安全靴、あとは防護服を着用するエリアもあります。
ごみ収集車が集まるプラットホームに施された工夫とは?
ーーこちらは、ごみ収集車がたくさん集まっていますね!
ごみ収集車が集まってくる、プラットホームと呼ばれる場所です。小学生の方達はここに来ると「ごみ収集車だ!」と皆喜んでくれます。当工場で所有しているものと思われがちな収集車なんですが、それぞれの市や町が委託した収集業者などの収集車なので、いろいろな色や形があります。
ーー本当に、色も形もさまざまですね。ゲートは全部で9カ所でしょうか?
そうです。緑のランプが点滅していると「もうすぐ収集車が来るよ」という合図です。1階で収集車がごみの計量を行って、どの市から事業系のごみ・家庭系のごみがどれくらい搬入されているのかを集計しています。
ーーコンピュータですべて管理されているんですね。
ーー全員がごみの分別を完璧にするというのは難しい場合もあるかと思いますが、燃えるごみに「燃えないごみ」や「缶・びん」などが混じっているときにはどのように対処されているんでしょうか?
主に事業系のごみ中心なんですが、内容物検査をしています。
当工場で処分できないのは、産業廃棄物です。たとえば、建設現場の廃材や運送会社さんが使用するような大きな発砲スチロールなどは実は燃えるごみではなく、処理の方法が決められた産業廃棄物なんです。内容物検査では、9番ゲートにある黄色い大きな機械「投入検査機」で中身をすべて確認して、産業廃棄物が混ざっていた場合には持ち帰っていただくこともあります。
ーーごみを燃やす前に検査することもできるんですね。ごみ収集車は、一日中やってくるものなんでしょうか?
いろんな場所から収集していますので、ごみ収集車は1日中やってきます。プラットホームの扉は、近づくとセンサーが車両を感知して自動で開閉するようになっています。
ーーあっという間に扉が開くんですね!プラットホームを見守っている方もいるんですね。
プラットホームで何かあったときにすぐ対応できるよう、プラットホーム全体を常時2人で監視しています。あと、床が濡れているのは、わざと水を流しています。
収集車はどうしてもタイヤにごみが付着してしまうので、タイヤの汚れを洗い落としてから外に出ていくようにしています。これで、周辺の道路を汚さないという工夫にもなっています。
ーーこちらの施設は、全体で何人くらい働いているのでしょうか?
当工場を管理しているのが、大体100名くらいです。私のように事務方の仕事をしているのが40~50名、工場棟で働いているのが50名くらいです。
ーー大きな施設なので、もっと大人数で働いているのかと思っていました。
ごみ収集車の業者も含めたら人数は多くなりますが、ごみ収集を行っている人は当工場で働いている人ではありません。
ーー市民の税金は、こういったごみを燃やす資金や施設を補修する資金として使われているのでしょうか?
そうですね。当組合は越谷・草加・八潮・三郷・吉川・松伏という6つの市町からなっています。この6つの市町から分担金をいただき、燃えるごみとし尿の処理を行っています。
ーー実際のクレーンの模型でしょうか?こんなに大きいんですね!
ごみのクレーンの実物大の模型です。小学生だとクレーンの模型につかまって、記念撮影していくこともありますね。クレーンは、ごみ収集車1台分(2~3t)のごみを一度に掴んでいます。
ーー本当にトイストーリーのクレーンみたいな形なんですね。(笑)
ええ、小学生の皆さんも「トイストーリー」って仰っていただけますね(笑)
小学生も大興奮のごみピット!ごみが減ってきている理由とは?
こちらが、ごみピットです。子ども達が大興奮してくれる場所ですね。
ーーごみピットはこんなに深さがあるんですね。(大きさは、縦19m×横60m×深さ31m)子ども達が大興奮してしまうのも、わかるような気がします。
目の前までクレーンが来たときは、皆大喜びしてくれますね。
ーークレーンが掴んだごみを少しずつ落としているように見えますが、あれは何をしているんでしょうか?
ごみをかき混ぜているところです。燃えやすいごみと燃えにくいごみがありますので、かき混ぜて燃えやすさを均一にしている作業です。
焼却炉の入り口が向かい側の壁にあるんですが、壁の向こう側のへこんだところが焼却炉の入り口です。15分に1回くらいクレーンでごみを入れていきます。先ほどの階段状になっているところにごみを入れて、だんだんごみが下がって来たら次のごみを投入します。
ーークレーンを運転するのは、何か技術が必要なのでしょうか?
誰でも運転できるわけではなく、クレーンの運転をするために必要な資格があります。クレーンは全部で3台ありまして、今動いているクレーンは茶色く見えますが、実は元の色は黄色なんです。だんだんと塗装が剥げてしまうので、毎年メンテナンスで整備し、塗装しています。
ーー先ほど年中無休でこちらを運転されていると伺いましたが、夜中もごみピットはフル稼働しているのでしょうか?
夜間は、コンピューターを利用して動かす場合もありますが、ほとんど人が動かしています。やはり、人がごみの状態を目で見て操作した方が効率が良いのです。
ーーごみピットのなかに数字がふられていますが、一番高い「25」の目盛りまでごみが溜まったこともあるんでしょうか?
昔ですが、平成15年はごみが一番増えてしまったときで、そのときには見学窓近くまでごみが増えました。
ーーそんなに大量のごみが!?当時、ごみがそこまで増えてしまったのは何か理由があったんでしょうか?
その当時は、ごみの分別がきちんとされていなかったんです。
ダンボールやペットボトル、白色トレーなど「リサイクル可能なごみ」も燃えるごみとしていました。今ではごみの分別が当たり前になっていますが、当時は分別されていなかったんです。
ーーごみをしっかり分別してもらうようになってから、ごみの量は減ってきているのでしょうか?
そうですね。ごみの量も減ってきて、最近は横ばいになっています。でも、昨年は家庭ごみが若干増えました。新型コロナウイルスの影響で、自宅にいる時間が増えたり、外食よりテイクアウトが増えたりしたことが関係しているのかもしれません。一方で、お店や会社から出る事業系ごみは減っていますね。
ーーもっと生ごみやプラスチックが多いのかなと思っていましたが、ごみピットの中はほとんどが紙ごみのように見えますね。
ごみの組成分析をしますと、1番多いのが紙ごみ、2番目に多いのがプラスチックごみ、3番目に多いのが厨芥類といわれる生ごみですね。
ーーこちらの写真は燃え残ったごみでしょうか?
右下の写真は、燃えないごみが焼却炉から出てきたときのものです。こちらの写真に写っているものは、燃えるごみに入れてはいけないものを示しています。特に水銀が入っている電池はとても危険で、燃やすと有害物質が出てしまいます。電池は、必ず分類してください。
ごみ処理施設を利用した展望台は、県外の人からも大人気!
ーーこちらの展望台は、ほんとうに素晴らしい眺めですね。
ありがとうございます。
ちょうど今はこしがや田んぼアートの見頃ですので、県内だけではなく県外の方もたくさんお越しいただいています。
ーー初日の出を展望台から見られるイベントも行っているのだとか?
そうなんです。今年はコロナ対策のため、初日の出のイベントは限定18人とさせていただきました。
ーーそれはプラチナチケットですね!(笑)
メモ
展望台は無料で入場可能。
公開日:月~金曜日(祝日・年末年始の閉庁日を除く)・毎月第3日曜日
公開時間:月~金曜日は9~17時まで・第3日曜日は9~16時30分まで(受付は公開終了時間の30分前まで)
月~金曜日は2階正面玄関にて受付。・第3日曜日は展望台入り口にて受付
※感染症対策のためマスクを着用して入場をお願いします。
ちなみに、展望台のなかには煙突が4本ありまして、煙突の高さは地上100メートル、展望台は地上80メートルのところにあります。
ーーだから、こんなに高い展望台が作られたんですね!
ーー田んぼアートがとても綺麗に見えていますが、農家の方がごみ処理施設と連携をとりながら取り組みが行われているんですか?
越谷市の観光協会などが中心となった、田んぼアートの実行委員会があります。
当組合も実行委員会に入っていて、この展望台を田んぼアートの観覧場所として協力しています。展望台からアートが綺麗に見えるように、測量士さん達が測量されて杭を打って、田んぼアートは作られています。
ーーたい肥のリサイクルもされていると伺いましたが?
あちらの白い屋根の施設が、たい肥化施設です。刈草や伐採した枝を発酵させて、たい肥を作っていますね。「リユースたいひ メチャ!!すくすく」という名前で、毎週月曜日にたい肥を販売しています。
ーーとってもユニークな名前ですね(笑)。
あちらに見える施設は、いきいき館です。ごみを燃やしたときの熱を、温水プールなどに利用しています。
ーーごみを燃やした熱も、上手にリサイクルされているんですね。
ーー広報として、どのような活動をされているのでしょうか?
広報紙などで、積極的に3R(リデュース・リユース・リサイクル)の紹介をしています。広報紙にはクイズコーナーもありまして、そちらにクイズの答えと紙面についてのコメントを寄せてくれる方もいらっしゃいますね。「ごみに対する意識が変わった」というお声をいただくと、やりがいを感じられます。
ーーごみの分別で何か気を付けていることはありますか?
お菓子の箱やトイレットペーパーの芯などは「雑紙」といって、リサイクルができるんです。だから、雑紙は分別するようにしています。
当組合では、雑紙のリサイクルを多くの人に知ってもらうため、雑紙回収袋を啓発用としてお渡ししています。この雑紙回収袋がない場合でも、家にある紙袋に雑紙を入れていただいて「古紙類」などの資源物の収集日に出せます。
メモ
「雑紙」とは?
具体的には投げ込みチラシ、パンフレット、ダイレクトメール、コピー用紙、封筒、学校配布のプリント、トイレットペーパーの芯、ノート、包装紙、紙袋、紙箱(ティッシュ箱や菓子箱等)などを指します。
※分別や排出方法は、各自治体の方法に従ってください。
ーー飾られているポスターも力作ぞろいですね!
小学4年生が社会科で環境の勉強をするんです。それで、3Rをテーマにしたポスターを描いてもらって入賞した生徒達の作品が飾られています。皆、一所懸命に描いてくれて嬉しいですね。
ーー最後に、皆様へメッセージをお願いします。
まずは、展望台に気軽に遊びに来ていただきたいです。展望台に来たことをきっかけに、ごみ処理施設や環境のことに興味を持っていただいて、ごみに対する意識も少しずつ変わっていただけると嬉しいです。
ーー本日はありがとうございました!
~取材後記~
取材を終えてから、我が家でも「雑紙」を意識して集めるようになりました。いつもはごみ箱に捨てていた雑紙が予想以上に多かったんだ!と驚くとともに、雑紙リサイクルの楽しさも感じています。
子ども達がごみをごみ箱に捨てられるようになってきたので「これは雑紙だからリサイクルできるね」と伝えています。これからも楽しみながら、我が家でもリサイクルを続けていきます。
メモ